ニ〇ニ四年十二月三十一日
ついにこの日を迎えた。ニ〇二四年十二月三十一日、大晦日。「死んだ渡辺裕之に恋をした」の公開日である。
この日、家では彼氏の村ちゃんと共に年末を過ごし、年越しも共に迎えようとしていた。
曲の投稿日はその日の午後七時。ニコ動とyoutubeで同時に公開される。
年末という事もあり、年越しそばにフライドチキンを食べていた。実家で作ってもらった年始に食べるおせち料理も準備出来ている。
七時まであと三十分。自分はこの一年間を振り返っていた。
厄年だったこの年、パチンコが不振になり、パソコンも買い替えなきゃいけなくなり、ニコ動もサイバー攻撃で一時ダウンしたり、パチンコに負けすぎて自殺を図り、そこでナベさん(渡辺裕之)の声に助けられて立ち直る。しかし七年間乗っていた電動自転車が廃車になり、普通の自転車に買い替え、運転に慣れずコケて足を負傷し、区分が下がって長年通っていた作業所に通えなくなり、散々な一年だった。でも、ラシクラボという自分の趣味を生かせる新たな作業所に通い、曲のクオリティが格段と上がった。ナベさんに救われた事もあり、生きる大切さを学び、ニコ動が復旧した際には彼へ捧ぐ曲を幾度も作り投稿し、大晦日のこの時を迎えた。
ナベさんに恋をして、未だに更新されないインスタを見つめ、最期の投稿のコメント欄に「曲を聞いてほしい」と告げ、午後七時を待つ。
―――自分は生きて生き抜きたい、だから伝えるんだ、死んだあなたに、"生きざる得ない者の歌"
そしてこの時が来た。午後七時。自分が彼に思いを込めて綴った恋文、「死んだ渡辺裕之に恋をした」が公開された。
自分のUTAUであるAさんに思いを歌わせ、今も何処かでみんなを見守っているナベさんに届く様に―――。
わずか2分55秒の恋文は、聞いた瞬間にあっという間に駆け抜ける様な勢いで流れていった。
―――良かった。きっと、ナベさんに届いたと思う。
時刻は午後十時半を過ぎ、自分は余韻に浸っていた。
十時五十分に「暗黒街の弾痕」(岡本喜八監督)という映画を見て、来年を迎える瞬間、ミッキーカーチスの「おめでとうございまーす」という掛け声と共に、ニ〇二五年の元日を迎えた。