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chapter1-2

「何でぎゅうぎゅう詰めになってるのよ!」

​佐江はこの密封密接状態になった密室が嫌だった。

​ただでさえこのコロナ禍である。それなのに人との距離があまりにも近く、しかもマスクもしていない状態であった。

ソーシャルディスタンスもままなっていないこの光景に嫌気が差し、佐江は彼らの元を離れようとした。その瞬間―――

"ビリビリビリ…ガガガ!!"

佐江の身体から突如電流が流れだした。しかも身体全体が震え、煙が出、更には身体自体が焼ける臭いがした。

「―――!!」

その光景に一同は唖然となった。電流を受けた佐江の体が光って見え、異様な光景が広がっていた。

電流は幾度となく流れ続けた。そして、佐江は倒れ、辺りは静かになった―――

「―――何が起きたの…?」

絵里という女性が立ち上がり、倒れた佐江を覗いた。佐江の体を見ると、あちこちで焼けた痕が見え、その形相は惨たらしい様で、アイドルの面影もない。最早即死だった。

「ひっ…!!」

絵里は驚き、その場をしゃがみ込んだ。この光景には一同も驚愕するばかり。すると、再びアナウンスが流れた。

「あなたはこれを見て理解出来たと思うだろう。もし離れようとすると、今の寺西佐江の様な目に合うんだ」

離れようとすると佐江の様な目に合う―――彼らは何やらさっぱり分からなかった。

更にアナウンスは続く。

「昨今、このコロナ禍で離れろ触れるなと騒いでいるが、ここでは専ら関係ない。ましてやここで離れたり触れなかったりすると、今の様に電流が流れる―――と、まあ、こういう"細工"をしておいた。腕と足回りを見てほしい」

そう言われて彼らはそれぞれ自身の腕と足の周りを見ると、両腕両足に輪っかの様な物が着けられていた。

「こんな物がどうしたのよ―――」

二岡はそれを見て無暗に外そうとしたが、アナウンスが答えた。

「もしそれを無暗に外そうとすると、先程の様に電流が流れる」

「―――!!」

二岡はそれを聞いて驚いた。更にアナウンスは続く―――

「この腕と足に付けられたブレスには、先程の様に離れたり、無理に取ろうとすると電流が流れる仕組みになっている。人の距離が約一人分開くと作動する様になっている。昨今言う"半径1.5メートル"離れろもここでは通用しない」

半径1.5メートル離れる事は死を意味する―――彼らはそれに動揺するしかない。

ただ、マスクは何故してないのか、それが気になった。

「せ、せめて感染予防の為にマスクはするべきだわ!」

二岡はせめてマスクはせよと伝えるが―――アナウンスはそれを否定した。

「こうして匿名希望で逃げようとするやり方は私は苦手なんでね。顔を覆い隠せばベールは守れるというのもここでは通用しない。せめてオープンで行こうじゃないか。全員がそろっているかの確認にもなるし、マスクで感染を防げと言ってるけど、どうせウイルスはマスクをしても感染することだってあるんだ。せいぜい感染しないかするかで敏感になってればいい―――」

非情さえも受け取れるアナウンスの声は彼らにさえ無常さを与えた。

ただ、彼らに分かっている事は、離れたら、死ぬ―――ただそれだけだった。

そしてアナウンスは彼らに告げる―――

「ここを出たけりゃ、"ゲーム"をしてもらおうか―――」

-二章へ続く-

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